「未来都市」や「メタバース」ということばを聞いて、なんだか遠い未来のお話のように感じていませんか?
SF映画の中だけの出来事のように思えるかもしれませんね。
しかし!

そんなSF映画に出てきそうな世界が、現実に存在するのです!
この記事は、サウジアラビアで建設が進む驚異の未来都市プロジェクト「NEOM(ネオム)」と、そのデジタルな双子であるメタバース「XVRS(エックスバース)」について、わかりやすく解説していきます。



なんだか難しそう…
そう感じている方も、どうかご安心ください。
この記事を読み終えるころには、NEOMが目指している理想の未来が、きっと理解できるはず。
念のためお伝えしておきますが、、、
この記事に書かれていることは、すべて実話であり、作り話ではありません。
それでは、はじめていきましょう!


- 自称日本一XANAに魅了された現役僧侶
- 2021年12月よりXANAコミュニティ「XANADAO」参加
- XANA関連NFTは100点以上所有
- メタバース関連ブログを運営
(Yoshi-Blog)
NEOMプロジェクトとは?サウジアラビアが描く未来の青写真


NEOMとは、、、
サウジアラビアの北西部、紅海に面した広大な土地に建設されている、未来志向の都市開発プロジェクトのこと。
新しいを意味するギリシャ語の「Neo」と、未来を意味するアラビア語「Mustaqbal」の頭文字「M」を組み合わせた造語です。
「新しい未来」そのものを創造しようという、壮大な意志が込められた名前なのです。
このプロジェクトは、単に新しい街を作るというだけではありません。
NEOMは、地球とわたしたちの未来をかけた、壮大な社会実験なのです。
サウジアラビアは国家戦略である「サウジ・ビジョン2030」を公開。
その中核を担うプロジェクトが「NEOM」です。
石油に依存してきた経済から脱却し、テクノロジー、観光、エンターテイメントといった新しい産業で国を豊かにしていくことを目指していますよ。
NEOMが掲げる目標は、非常に野心的です。
- 100%再生可能エネルギーの実現: 都市で使われる電力のすべてを、太陽光や風力といったクリーンなエネルギーでまかないます。
- 持続可能性の追求: 周囲の自然の95%を保護し、人間と自然が調和して暮らせる環境を創り出します。
- 人間中心の設計: 車社会から脱却し、すべての生活必需品が徒歩5分圏内にそろう、人の暮らしやすさを最優先した街を設計します。
これらは、現代の都市が抱える交通渋滞、環境汚染、生活コストの高騰といった多くの課題に対する、一つの答えとも言えるでしょう。
サウジアラビアは、このNEOMを通じて、未来の都市生活における新しい世界の基準を打ち立てようとしているのです。






しかし、この夢物語を実現するために、世界中から最高の頭脳と技術が集結し、すでに建設は着々と進んでいます。
この記事を読み進めていただければ、その壮大な計画の具体的な姿が、少しずつ見えてくるはずですよ。
NEOMを構成する4つの未来都市エリア


NEOMという巨大なプロジェクトは、それぞれが異なる目的と特徴を持つ、主に4つの地域から成り立っています。
- ザ・ライン(The Line): 常識を覆す、未来の線形都市。
- オクサゴン(Oxagon): 海に浮かぶ、次世代の産業ハブ。
- トロジェナ(Trojena): 砂漠に出現する、驚きの山岳リゾート。
- シンダーラ(Sindalah): 世界のVIPを迎える、紅海の高級アイランド。
一つひとつが、まるでSF映画から飛び出してきたかのような、驚きに満ちた場所です。
それぞれのエリアが、どのような役割を担い、どのような未来の暮らしを実現しようとしているのか、詳しく見ていきましょう。
ザ・ライン(The Line): 全長170kmの革新的な暮らし


まずご紹介するのは、NEOMプロジェクトの中でも、もっとも象徴的で、もっとも世界に衝撃を与えた「ザ・ライン」です。
ザ・ラインは、全長170キロメートルにわたって一直線に伸びる前代未聞の都市。
ただ長いだけではありません。
その構造は、高さ500メートル、幅わずか200メートルの、2枚の巨大な鏡のような壁が平行にそびえ立つ形をしています。
まるで、広大な砂漠を貫く、巨大な一本の光の廊下。
その中に、900万人の人々が暮らす未来のコミュニティが築かれる計画です。
ザ・ラインの最大の特徴は、これまでの都市の概念を根底から覆す、その革新的な設計思想にあります。
- 自動車、道路、CO2排出ゼロ: ザ・ラインの中には、自動車が走る道路が存在しません。
移動はすべて、地下を走る高速鉄道(ザ・スパイン)や徒歩が基本。これにより、交通渋滞や大気汚染から解放された、静かでクリーンな環境が実現します。
都市の端から端まで、わずか20分で移動。 - 究極の利便性: 都市機能はすべて、垂直方向に積み重ねられています(垂直都市主義)。
スーパーマーケットや学校、病院、公園といった生活に必要なあらゆる施設が、徒歩5分圏内に配置される計画です。
毎日の通勤や買い物のために、長い時間を費やす必要がなくなるのです。 - 自然との共存: 都市の幅をわずか200メートルに抑えることで、土地の利用を最小限にし、周囲に広がる砂漠や山々の自然を95%も保全。
鏡張りの壁面は、周囲の景観を反射し、都市が自然に溶け込むようなデザインになっています。
設計上は公園やオープンスペースが各所に設けられ、自然光が差し込むように工夫されているとか。
そして、この都市の本当のすごさは、「コグニティブ・シティ(考える都市)」というコンセプトにあります 。
AIと無数のセンサーが街中に張り巡らされ、住民のニーズを予測して、先回りしてサービスを提供してくれるのです 。
いわば、街全体が、あなたのことをよく知る親友や、優秀な執事のようになってくれるイメージ。
そんな未来の暮らしが、ザ・ラインでは現実のものになろうとしています。
オクサゴン(Oxagon): 海に浮かぶ未来の産業都市


次にご紹介するのは、NEOMの産業と物流の中心地となる「オクサゴン」です。
オクサゴンは、紅海に浮かぶ世界最大の浮体構造物として計画されている、八角形の産業都市。
NEOM、ひいてはサウジアラビアの経済多角化を牽引する、非常に重要な役割を担っています。
ここは、いわば未来のサステナブルな工場地帯。
オクサゴンの目的は、ただモノを作るだけではありません。
「インダストリー4.0」と呼ばれる次世代の産業革命の考え方に基づき、環境に配慮した持続可能な形で、世界の最先端技術が集まる場所を目指しています。
- 100%クリーンエネルギー: オクサゴンもまた、そのすべての動力を再生可能エネルギーでまかないます。
太陽光はもちろん、グリーン水素といった次世代エネルギーの研究開発拠点にもなります。 - 循環経済の実現: ここでは、廃棄物を出すことなく、すべての資源を再利用する「循環経済」のモデルが導入。
AIやロボット技術を駆使して、製造プロセスを徹底的に効率化し、環境への負荷を限りなくゼロに近づけることを目指しています。 - 未来の産業が集結: 自律走行車、持続可能な食料生産、次世代の医薬品やバイオテクノロジーなど、未来を形作る重要な産業がこのオクサゴンに集結。
スエズ運河に近いという地理的な利点を活かし、世界中への物流ハブとしての機能も期待されています。






NEOM港も拡張工事が進められており、世界で最も効率的な港の一つになることを目指しています。
オクサゴンは、ザ・ラインで暮らす人々の生活を支え、NEOM全体の経済を動かす力強いエンジンとなるでしょう。
トロジェナ(Trojena): 砂漠に誕生する山岳リゾート


NEOMのプロジェクトの中でも、特に人々の想像力をかき立てるのが、この「トロジェナ」ではないでしょうか。
トロジェナは、標高1,500メートルから2,600メートルの山岳地帯に建設される、一年中楽しむことができるマウンテンリゾートです。
2029年、アジア冬季競技大会の開催地となっていますよ。
というのも、この場所はサウジアラビアの砂漠地帯にありながら、冬には気温が氷点下まで下がり、スキーやスノーボードを楽しむことができるのです。
砂漠の国に、本物の雪が降るスキーリゾートを創り出す。
この前代未聞の挑戦は、NEOMがいかに常識にとらわれないプロジェクトであるかを象徴しています。
- 中東初の屋外スキー体験: トロジェナでは、年間を通じて穏やかな気候を活かしつつ、冬の3ヶ月間は降雪が見込まれ、合計30キロメートル以上にも及ぶスキーコースが整備。
すでに、2029年のアジア冬季競技大会の開催地に決定しており、世界中から注目を集めています。
トロジェナは2026年に完成予定で、アラビア半島初の本格的な屋外スキーリゾートとなります。 - 自然と建築の融合: トロジェナの中心には、2.8キロメートルにわたる巨大な人工湖が作られ、その周りにホテルやレストラン、高級ブティックなどが建ち並びます。
建築物は、周囲の自然景観を損なわないように巧みに設計され、まるで山の一部であるかのよう。 - 多様なアクティビティ: スキーだけでなく、ウォータースポーツやハイキング、マウンテンバイク、そしてウェルネスリゾートでの癒やしの時間など、季節を問わず様々なレジャーやアドベンチャーが体験できる場所になります。






人工雪の生成や巨大な湖の維持には、莫大なエネルギーと水が必要。
NEOM側は、これらもすべて再生可能エネルギーと、海水を淡水化する持続可能な技術でまかなうとしています。
生態系への影響を懸念する声があるのも事実。
トロジェナの挑戦は、人間の創造力と自然との共存のあり方を問う、大きな問いかけでもあるのです。
シンダーラ(Sindalah): NEOM最初の完成形


さいごにご紹介するのは、紅海に浮かぶ高級アイランドリゾート「シンダーラ」です。
シンダーラは、NEOMのプロジェクトの中で、いち早く世界にその姿を現した、最初の目的地です。
2024年10月に、ついに正式に開業し、最初のゲストを迎え入れました。
しかし、当初の計画より3年遅れ、建設費も当初の3倍に膨れ上がったことが報告されています。
これまで計画図やCGでしか見ることのできなかったNEOMが、ついに現実のものとなった象徴的な出来事です。
- 世界的なヨットの聖地へ: シンダーラは、世界のスーパーヨットが集まる新たなハブとなることを目指しています。
最新鋭のマリーナには、86隻のヨットを係留でき、さらに沖合には75隻のスーパーヨット用のブイが設置されます。 - 最高級のホスピタリティ: 島には、「フォーシーズンズ」や「ラグジュアリー・コレクション」といった世界に名だたる高級ホテルブランドが進出し、400室以上の客室と、プライベートなヴィラが用意されます。
- 洗練された大人の楽園: 美しいビーチクラブ、チャンピオンシップ仕様のゴルフコース、スパ、そして高級レストランやブティックが、訪れる人々に最高級の体験を提供します。
建築は、世界的に有名なデザイナーが手がけ、島の自然な美しさと見事に調和しています。






もちろん、当初の計画よりは遅れ、予算も超過したという課題も指摘されています。
しかし、この成功は、ザ・ラインや他のエリアの建設を進める上で、大きな弾みとなることでしょう。
シンダーラは、これから世界にNEOMの魅力を発信していく、いわば「未来への玄関口」なのです。
XVRS(エックスバース): NEOMの魂となるメタバース
さて、ここまでNEOMの物理的な都市の姿を見てきましたが、NEOMの革新性はそれだけにとどまりません。
NEOMには、もう一つの側面があります。
それが、デジタル空間に存在する双子の都市、「XVRS(エックスバース)」です 。
XVRSは、
NEOMの物理的な都市と完全に連動する「コグニティブ・デジタルツイン・メタバース」
と定義されています。
少し難しいことばが並びましたね。
一つひとつ、解きほぐしていきましょう。
- デジタルツイン: これは、現実世界にある都市や建物を、そっくりそのままデジタル空間にコピーして再現する技術のことです。
現実世界の「鏡の世界」をコンピュータの中に創り出すようなもの。
このデジタルツインを使えば、実際に建設を始める前に、都市の機能をシミュレーションしたり、問題点を洗い出したりすることができます。 - メタバース: これは、アバターと呼ばれる自分の分身を使って、人々が交流したり、経済活動を行ったりできる、インターネット上の仮想空間のことです。
- コグニティブ(Cognitive): これは「認知する」「考える」という意味。つまり、ただの仮想空間ではなく、AIが常に学習し、考え、現実世界にフィードバックしてくれる能力を持っているということです
これらを統合したXVRSは、単なるゲームやバーチャルツアーの空間ではありません。
XVRSは、NEOMという都市の「魂」や「神経網」のような存在なのです。
物理的な都市とデジタルな都市が、リアルタイムで情報を交換し合い、互いに影響を与えながら進化していく。
それが、XVRSが目指す未来の姿です。
XVRSが実現する未来の暮らし
では、このXVRSは、わたしたちの暮らしを具体的にどのように変えてくれるのでしょうか。
XVRSがもたらすのは、現実世界と仮想世界がシームレスに溶け合った、「複合現実(MR)」の体験です。
例えば、こんなことが可能になると言われています。
- パーソナライズされたサービス: あなたが自宅のドアに近づくと、XVRSと連動したAIがそれを察知し、エレベーターをあなたの階に呼んでおいてくれます。
冷蔵庫の中身が減れば、自動的に食料品を注文してくれるかもしれません。
まるで、見えない執事が常にあなたの生活をサポートしてくれるかのようです。 - 時間と場所からの解放: 大事な会議があるけれど、どうしても家を離れられない。
そんなとき、あなたは自宅にいながら、自分のリアルなホログラム(立体映像)やアバターを会議室に送り込み、会議に参加することができます。
友人と会うときも、物理的に同じ場所にいなくても、XVRSの中で一緒にスポーツを観戦したり、会話を楽しんだりできるのです。 - 新しい経済圏の誕生: XVRSの中では、暗号資産やNFT(非代替性トークン)を使った、独自のデジタル経済圏が生まれます。
人々は、物理的にNEOMに住んでいなくても、XVRSを通じてビジネスを行ったり、デジタルアートを売買したりして、収入を得ることが可能になります。






XVRSは、都市の運営を効率化するだけでなく、そこに住む一人ひとりの生活の質を劇的に向上させ、まったく新しい体験を生み出すための、強力なプラットフォームとなるのです。
NEOMが直面する大きな壁:理想と現実のギャップ
ここまで、NEOMが描く輝かしい未来のビジョンについてお話ししてきました。
しかし、これほど壮大で前例のないプロジェクトですから、その道のりは決して平坦ではありません。
夢の実現のためには、乗り越えなければならない大きな壁があるのです。
多くの課題や批判が存在することも、知っておく必要もありますよね。
ここでは、NEOMが直面している主な課題を、客観的な視点から見ていきましょう。
莫大なコストと資金調達の課題
最も現実的な課題の一つが、その莫大な建設コストです。
当初、NEOMプロジェクト全体の費用は5,000億ドル(約78兆円)と見積もられていました。
しかし、トロジェナだけでも当初予算の2倍となる380億ドルに膨れ上がり、冬季競技大会史上最高額の会場となっています。
これだけでも天文学的な数字ですが、一部の報道によれば、その費用は最大で8兆8,000億ドル(約1370兆円)にまで膨れ上がる可能性があると指摘されています。
これは、サウジアラビアの国家予算の25倍以上にも相当する金額です。
この巨額の費用をどうやってまかなうのか?
主な資金源は、サウジアラビア政府の政府系ファンド(PIF)ですが、コストの高騰により、予算の承認が遅れるといった事態も起きています。
海外からの直接投資を呼び込むことも重要な課題となっています。






2024年4月に、ザ・ラインの建設計画が大幅に縮小され、2030年までに完成する区間は全長170kmではなく2.4kmのみで、住民も150万人から30万人に削減されるという報道が出ました。
しかし、サウジアラビア経済企画大臣は
NEOMのプロジェクトは計画通り進んでいる。規模の変更はない
と否定し、170kmの建設は段階的に進められ、2045年の完成を目指すとしています。
現在、第1段階として5kmの中央区間を2030年までに完成させる計画。
現在、14万人を超える労働者が建設に従事しており、来年には20万人まで拡大する予定です。
衛星画像では、大規模な土木工事、完成した建物、格子状のインフラ配置、稼働中の支援施設などが確認され、着実な進展を示しています。
この壮大なビジョンを維持するためには、安定的で透明性の高い資金計画が不可欠と言えるでしょう。
環境への影響と「グリーンウォッシング」批判
NEOMは「100%再生可能エネルギー」「自然の95%を保護」といった、環境への配慮を強く打ち出しています。
しかし、その一方で、環境保護団体などからは「グリーンウォッシングではないか」という厳しい批判も受けています。
グリーンウォッシングとは、環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうではない、ということを指すことばです。
- 建設に伴うCO2排出: ザ・ラインの建設には、大量のガラス、鉄鋼、コンクリートが使われます。
これらの資材を製造し、運搬する過程で排出される「埋蔵炭素」は、推定1.8ギガトンにも上るとされ、これはイギリスの年間排出量の4年分以上に相当するという試算もあります。 - 生態系への影響: ザ・ラインの巨大な鏡張りの壁は、その地域を通過する渡り鳥にとって「死の罠」となり、衝突事故を引き起こす危険性が指摘されています 。
また、トロジェナの人工スキー場や人工湖のように、自然の生態系を大きく改変することへの懸念の声も上がっています。 - 海水の淡水化: NEOMの水は、すべて海水を淡水化して作られます。このプロセスには大量のエネルギーが必要な上、「濃縮塩水」と呼ばれる高濃度の塩水が排出され、海の生態系に悪影響を与える可能性があります。






NEOM側も、濃縮塩水から有益な物質を取り出して再利用する技術などを開発していると主張。
その持続可能性の主張と、大規模開発の現実との間に、大きな隔たりがあるのではないかと問われています。
人権をめぐる問題
NEOMプロジェクトが抱える問題の中で、もっとも深刻で、心を痛めるのが人権に関する問題です。
NEOMの広大な建設予定地には、もともとフワイタット族という先住民族の人々が、先祖代々暮らしていました。
しかし、プロジェクトの進行に伴い、約2万人の住民が強制的に立ち退きをさせられたと報告されています。
立ち退きに抗議した人々が逮捕されたり、射殺されたりする悲劇的な事件も起きました。
2024年5月には、元サウジアラビア情報官が、当局がNEOMの土地確保のため致命的な武力行使を許可していたと証言し、部族メンバーの射殺を命じられたと告発。
また、47名の部族メンバーが逮捕され、15名が15年から50年の懲役刑を受け、少なくとも3名が死刑判決を受けていることが確認されています。
さらに、建設現場で働く移民労働者の過酷な労働環境も、国際的な人権団体から厳しく批判されています。
酷暑の中での長時間労働、賃金の未払いやパスポートの没収といった、搾取的な事例が数多く報告されているのです。






しかし、報告されている実態との間には、看過できないほどの大きな隔たりがあります。
どんなに素晴らしい技術やビジョンがあったとしても、それが人々の尊厳を踏みにじるものであってはならない。
これは、NEOMが国際社会から信頼を得るために、真正面から向き合わなければならない、きわめて重い課題です。
プライバシーと監視社会への懸念
さいごに、XVRSがもたらす「コグニティブ・シティ」というコンセプトが内包する、光と影について触れておきましょう。
AIが常にわたしたちのニーズを予測し、先回りしてサービスを提供してくれる。
それは、一見すると非常に快適で便利な社会に思えます。
しかし、その裏返しとして、わたしたちの生活のあらゆるデータが、常に収集・分析されているという現実があります。
- どこへ行き、誰と会い、何を買うのか?
- そうした個人情報がすべて都市に把握されるとしたら、それはプライバシーの侵害ではないのか?
- あるいは、そのデータが政府によって、人々を管理・監視するためのツールとして悪用される危険はないのか?
サウジアラビアの人権活動家に対するサイバー監視の実績などを踏まえると、こうした懸念は決して杞憂とは言えません。






NEOMは、データはユーザー自身が管理できるプラットフォームを用意すると説明しています。
その仕組みが本当に透明性高く運用されるのか、注意深く見ていく必要がありますね。
まとめ:NEOMは人類の未来への壮大な問いかけ
さいごに、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- NEOMとは、サウジアラビアが石油依存経済からの脱却を目指し、国の威信をかけて建設する、まったく新しい未来都市プロジェクト
- 「ザ・ライン」「オクサゴン」「トロジェナ」「シンダーラ」という4つの主要エリアから構成され、それぞれが未来の暮らし、産業、観光の新しい形を提案
- 物理的な都市と連動するメタバース「XVRS」が、AIとデジタルツイン技術を駆使して、住民にこれまでにない快適でパーソナライズされた体験を提供
- 莫大なコスト、環境への影響、深刻な人権問題、そしてプライバシーへの懸念といった、多くの複雑で困難な課題にも直面
NEOMの4地域の開発状況などをザザッとまとめると、以下の通り。
地域 | 概要 | 開発状況 |
---|---|---|
ザ・ライン (The Line) | 全長170km、高さ500m、幅200mの鏡張りの壁で覆われた線形都市。車や道路がなく、100%再生可能エネルギーで稼働する。 | ・2022年10月時点で全長にわたる掘削工事が進行中。 ・2024年11月に第1期の都市計画、設計、エンジニアリングに関するパートナー契約を締結。 ・第1期工事の完成は2030年を予定。 ・完成時には900万人の居住を想定しているが、巨額の建設費や技術的な実現性、環境への影響などが課題として指摘されている。 |
オクサゴン (Oxagon) | 紅海に浮かぶ八角形の次世代型工業団地。世界最大の浮体式構造物となる予定。 | ・2021年11月にプロジェクトが正式に始動。 ・NEOMの他のプロジェクトと結ぶインフラ回廊の建設入札準備が進められている。 ・NEOM全体のインフラ工事の進捗は約20%(2023年1月時点)。 |
トロジェナ (Trojena) | 砂漠地帯に建設される山岳リゾート。一年中スキーやアドベンチャースポーツが楽しめる。 | ・2026年完成予定。 ・2029年アジア冬季競技大会の開催地に決定している。 ・現在、山岳地帯で建設が進められている。 |
シンダーラ (Sindalah) | 紅海に浮かぶ高級アイランドリゾート。世界のVIPをターゲットにしている。 | ・2024年初頭からゲストの受け入れを開始する予定だったが、最近、招待客の第一陣を迎えてオープンした。 ・NEOMで最初に完成し、運営を開始するプロジェクトとなる。 ・ヨットハーバー、ホテル、ゴルフコースなどが含まれる。 |
NEOMは、まさに光と影が交錯する、巨大なプロジェクトです。
それは、テクノロジーがもたらす輝かしい可能性と、その裏に潜む倫理的な課題を、わたしたちの目の前に突きつけています。
このプロジェクトが、最終的にどのような形で完成し、世界に何をもたらすのか。
それは、まだ誰にもわかりません。
NEOMの挑戦を追いかけることは、これからの都市のあり方、テクノロジーと人間がどう向き合っていくべきかという、わたしたち自身の未来について考える、非常に重要なきっかけを与えてくれるはずです。
大切なのは、未来をより良くしようと試行錯誤するプロセスそのものなのかもしれませんね。
ぜひ、あなたもこの壮大な物語の行く末を、一緒に見守っていきませんか。
さいごまでお読みいただき、本当にありがとうございました。