サウジアラビアって、砂漠と石油の国だよね?メタバースとどんな関係があるの?
ニュースやインターネットで断片的に見聞きはするけれど、自分とは少し遠い世界の話…。
そんなふうに、感じていませんか?
もしあなたが今、そんな風に感じているなら、この記事はきっとあなたのためのものです。
「サウジアラビア」と「メタバース」。
一見するとまったく無関係に思える2つのキーワードです。
しかし、今まさに水面下で固く結びつき、世界の未来を根底から書き換えようとしている、巨大なうねりの中心にあるんですよ。
この記事では、国家レベルの壮大な戦略から、私たちの生活にどう影響してくるのかまで、脳科学や心理学の話を交えながら、誰にでもわかるように、じっくりと解説していきます。
それでは、はじめていきましょう!

- 自称日本一XANAに魅了された現役僧侶
- 2021年12月よりXANAコミュニティ「XANADAO」参加
- XANA関連NFTは100点以上所有
- メタバース関連ブログを運営
(Yoshi-Blog)
1.なぜ今、サウジアラビアなのか? – 脱石油を目指す王国の静かなる革命 –




1-1. 未来への危機感が生んだ「サウジ・ビジョン2030」
サウジアラビアが、国の収入の大部分を石油に頼っていることは、よく知られていますよね。
これは今まで、国に莫大な富をもたらしてきました。
しかし、その一方で、国の経済がたった一つの資源、つまり「石油」という一本足打法に頼り切っている状態は、非常に不安定で、リスクが高いことも意味します。
例えば、
- 世界経済の状況によって、石油の値段は大きく変動
- 環境問題への意識の高まりから、世界はだんだんと「脱炭素社会」へ
- 新しいエネルギー技術が生まれれば、いつか石油の価値が大きく下がるかも
こうした未来のリスクを、国のトップであるムハンマド・皇太子は誰よりも敏感に感じ取っているんです。
そこで、彼が打ち出したのが「サウジ・ビジョン2030」という、壮大な国家改革プランです。






このビジョンが発表された時、世界中の多くの専門家は、そのあまりに壮大な目標に「本当に実現できるのだろうか?」と半信半疑でした。
しかし、サウジアラビアは豊富な資金力を背景に、このビジョンを驚異的なスピードで現実のものにしようと動き出しているのです。
1-2. 国の宝は「石油」から「若者」へ
そして、この「体質改善」を成功させる上で、サウジアラビアが持つもう一つの、そして最大の強みが「人」なんです。






しかし、この有り余るほどの若いエネルギーは、いわば「諸刃の剣」でもあります。
彼らのエネルギーがポジティブな方向、つまり、新しい産業の創造や、社会の発展へと向けられれば、それは国にとって計り知れないほどの推進力になります。
一方で、もし彼らが将来に希望を持てず、そのエネルギーを向ける先を見失ってしまったら…?
それは、社会の不安定さを増す要因にもなりかねません。
だからこそ、サウジアラビア政府は、この若い世代が夢中になれる「新しい舞台」を用意する必要があったんです。
その最高の舞台こそが、「メタバース」だった、というわけなんですね。






2.メタバースって、そもそも何? – 「もう一つの現実」を科学する –
さて、サウジアラビアがなぜ新しい舞台を必要としているのかが見えてきたところで、「舞台」そのものである「メタバース」について、少しだけ深く掘り下げていきましょう。






2-1. 「見る」インターネットから「入る」インターネットへ
考えてみてください。
今ぼくたちが使っているインターネットは、スマートフォンやパソコンの「画面」を通して、情報を「見て」いますよね。
ウェブサイトを読んだり、動画を視聴したり。
いわば、劇場の客席から舞台を眺めているような状態です。
それに対してメタバースは、その舞台の中に、自分自身が「入って」いける世界なんです。
アバターと呼ばれる、自分の分身を操作して、3Dで構築された空間の中を自由に歩き回り、世界中の人々と出会い、会話し、共同で何かを創り出すことさえできる。
これは単にグラフィックがリアルになった、というだけの変化ではありません。
ぼくたちの脳にとっては、これは「体験の質」が根本的に変わる、非常に大きな変化なんですよ。
心理学の世界では、「場所細胞」という、特定の場所にいる時にだけ活動する脳の神経細胞があることが知られています。
メタバース空間で、まるで本当にそこに「いる」かのような感覚(これを専門的には「実在感」と言います)を覚えるのは、こうした脳の仕組みが深く関わっているからだと考えられています。
つまり、、、
メタバースは、ぼくたちの脳に「これは、もう一つの現実なんだ」と認識させる力を持っている、ということなんです。
2-2. メタバースを構成するキーワードたち
メタバースという言葉の周りには、なんだか難しそうな専門用語がたくさん飛び交っていて、それが多くの人を混乱させる原因にもなっていますよね。
でも、大丈夫。
一つひとつの言葉を、身近なものに喩えながら見ていけば、その役割がすっきりと理解できるはずです。
🤖 アバター
これは、デジタルの世界における「あなたの分身」です。
現実の自分そっくりに作ることもできれば、理想の姿や、まったく別のキャラクターになることも可能。
このアバターを通して、あなたはメタバースの中を自由に動き回ります。
👓 VR / AR
VR(仮想現実)は、専用のゴーグルを装着することで、視界のすべてがデジタル空間に切り替わる技術です。
いわば「異世界への扉」ですね。
AR(拡張現実)は、現実の風景に、スマホやグラスを通してデジタル情報を「重ねて」表示する技術です。
『ポケモンGO』をイメージすると分かりやすいかもしれません。
いわば「現実世界へのデジタルな重ね着」です。
👬 デジタルツイン
これは、工場や都市、あるいは地球全体といった、現実空間のあらゆるものを、そっくりそのままデジタルの世界に再現したものです。
「現実世界の双子の兄弟」ですね。
このデジタルの双子を使って、未来のシミュレーションをしたり、現実世界では不可能な実験をしたりすることができるんです。
🖼️ NFT(非代替性トークン)
NFTが一番理解しにくいかもしれません。
NFTは、デジタルデータに唯一無二の証明を与える技術です。






3.運命の出会い – サウジアラビアとメタバースが繋がる必然 –
さて、ここまでで「サウジアラビアがなぜ新しい舞台を求めているのか」、そして「メタバースとはどんな舞台なのか」という、2つのピースが揃いました。
いよいよ、この2つのピースが「カチッ」と音を立ててはまる、物語の核心部分へと入っていきましょう。
3-1. 砂漠に出現する未来都市「NEOM」
サウジ・ビジョン2030の、数あるプロジェクトの中でも、その象徴として、そして最も壮大なプロジェクトとして世界中の注目を集めているのが、未来都市「NEOM(ネオム)」です。






しかし、このNEOMプロジェクトの本当の凄さは、その見た目の奇抜さや、規模の大きさだけにあるのではありません。
NEOMの核心、その根幹を成す思想は、
「現実の物理都市と、それと完全に同期するデジタルの仮想都市を、最初からセットで創り上げる」
という点にあるんです。
先ほど説明した「デジタルツイン」を、都市まるごと、国家レベルで創り上げてしまおうという、前代未聞の試みなんですよ。
いわば、NEOMは「人類の未来を実験する、地球上で最も巨大な研究室」と言えるかもしれません。
3-2. NEOMの心臓部、メタバース「XVRS」
そして、このNEOMのデジタルツインとして機能するメタバースには、「XVRS(エクスヴァース)」という名前が付けられています。
このXVRSは、単に都市の見た目を3Dで再現しただけのものではありません。
- 都市の交通網、電力や水道といったインフラの状況
- 建物のエネルギー消費量
- 人々の流れや混雑状況
- ドローンが運ぶ物流の動き
こうした、都市で起きるありとあらゆる出来事が、リアルタイムでデータ化され、XVRSの中に反映されるんです。






そして、このXVRSは、都市の管理者だけのものではありません。
NEOMに住む人々は、アバターを通してこのXVRSにアクセスし、様々なサービスを受けることになるんです。
ここで、具体的な活用例をいくつか見てみましょう。
🏛️ 行政サービス
引っ越しの手続きや、様々な申請のために、わざわざ市役所に出向く必要はありません。
自宅にいながら、アバターで仮想市役所を訪れ、アバターの職員からサポートを受けることができます。
🛍️ ショッピング
お店に行く前に、メタバース空間で商品を3Dで確認したり、アバターに洋服を試着させたりすることができます。
ARグラスをかければ、自分の部屋に実物大の家具を配置して、購入前にサイズ感や色合いを確かめることもできます。
🩺 医療・健康
日々の健康データは自動で記録され、異常があればAIが検知して、アバターのドクターからアドバイスが届きます。
専門的な診断が必要な場合も、世界中の名医に、メタバースを通して診察してもらうことが可能になるかもしれません。
🎤 エンターテイメント
現実のスタジアムと、メタバース上のスタジアムが完全に連動し、世界中のどこからでも、まるで最前列にいるかのような臨場感で、スポーツ観戦やライブコンサートに参加できる。
NEOMでは、そんな体験が日常になるんです。






例えば、サウジアラビアは国土が非常に広く、都市と都市が離れています。
メタバースがあれば、物理的な距離に関係なく、質の高い教育や医療を、国中のどこにでも届けることができますよね。
また、イスラムの教えに基づく、男女の活動が分かれている場面が多いといった、独自の社会規範があります。
メタバース空間は、そうした物理的な制約や、現実世界でのしがらみから人々を解放し、特に女性がビジネスや社会活動に参加する新しい機会を生み出す可能性を秘めている、とも考えられているんです。


メタバースは、当たり前のものになる
「でも、そんな未来都市に住むわけじゃないし、結局、自分にはあまり関係のない、遠い国の話かな…」
もしかしたら、あなたは今、そう感じているかもしれませんね。
確かに、ぼくたちがすぐにNEOMの住民になるわけではないでしょう。
しかし、ここで起きていることは、決して対岸の火事ではないんですよ。
考えてみてください。
今ぼくたちが当たり前に使っているスマートフォンやGPSの技術も、元をたどれば、国家規模の宇宙開発競争や、軍事技術の中から生まれてきたものです。
NEOMという巨大な「実験室」で、莫大な予算をかけて開発されたメタバースの技術やサービス。
数年後、形を変えて、ぼくたちが普段使うスマホアプリや、インターネットのサービスの中に、必ず「当たり前のもの」として溶け込んでくるはずなんです。
だからこそ、今、この巨大な実験室で何が起きているのかを知っておくことは、数年後の未来を先取りすることに繋がる、と言えるのかもしれませんね。
4.オイルマネーの奔流 – 世界を買い集める国家ファンドの狙い –
NEOMという壮大な舞台の建設と並行して、サウジアラビアはもう一つ、非常に重要な手を打っています。
それは、「世界の有望な技術とコンテンツを、お金で買い集める」という、大胆な戦略です。
その実行部隊となっているのが、「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」と呼ばれる、サウジアラビアの政府系ファンドです。






そして、そのPIFが、今最も熱い視線を注いでいる分野こそが、「ゲーム」と「eスポーツ」、そしてその先にある「メタバース」なんです。
日本の任天堂やカプコン、コーエーテクモ、韓国のNEXONといった、世界的に有名なゲーム会社の株式を次々と取得しているニュースは、多くの人を驚かせました。






サウジアラビアのメタバース戦略 3STEP
STEP1:投資する
まず、PIFの圧倒的な資金力を使って、世界中の有望なゲーム、eスポーツ、メタバース関連企業の株式を取得し、影響力を持つ。
STEP2:呼び込む
投資先企業に対して、サウジアラビア国内に開発拠点を置くよう働きかけたり、共同でプロジェクトを立ち上げたりする。
そうすることで、世界最先端の技術や人材を、サウジアラビア国内に呼び込む。
STEP3:自前で創る
呼び込んだ技術と人材を活用して、NEOMをはじめとする国内プロジェクトを加速させる。
最終的には、サウジアラビア国内の若者たちが、自分たちの手で、世界に通用するコンテンツやサービスを創り出せるような「産業の生態系(エコシステム)」を完成させる。






5.光と影 – この壮大な実験が人類に問いかけるもの –
ここまで、サウジアラビアが描く、壮大で、希望に満ちた未来のビジョンについてお話ししてきました。
物理的な距離や身体的な制約を超え、誰もが質の高いサービスを受けられ、新しい形で社会に参加できる。
そんな世界が実現するかもしれないと思うと、なんだかワクワクしてきますよね。
しかし、どんなに素晴らしい技術にも、必ず「光」の側面と「影」の側面があることを、ぼくたちは忘れてはなりません。






プライバシーと監視の問題
NEOMのような都市では、ぼくたちの行動は、良くも悪くもすべてデータ化されます。
そのデータが、市民の安全や快適な生活のために使われるうちは良いでしょう。
しかし、もしそのデータが、人々を監視したり、思想や行動をコントロールしたりするために使われたとしたら…?
便利さとプライバシーのトレードオフを、社会としてどこまで許容するのか。
これは、これからぼくたちが必ず向き合わなければならない問題です。
自由と統制の問題
本来、インターネットやメタバースの根底には、誰にも縛られない「自由」で「オープン」な文化があります。
しかし、サウジアラビアのように、特定の価値観や社会規範を持つ国家が主導して創るメタバースは、その自由な文化と、どう共存していくのでしょうか。
仮想空間での表現の自由は、どこまで認められるのか。
そこには、何らかの「検閲」や「ルール」が適用されるのか。
これもまた、非常に難しい問題です。
現実からの逃避
メタバースがあまりに魅力的で、快適な場所になった時、人々は困難や不条理に満ちた「現実世界」と向き合うことをやめてしまうのではないか。
そんな懸念を抱く人もいます。
ぼくたちの心、特に脳の報酬系と呼ばれる部分は、強い快楽や楽しさを感じると、もっともっと、とそれを求めてしまう性質があります。
メタバースという、意のままに作り変えられる世界が、ぼくたちの心にどんな影響を与えるのかは、まだ誰にもわかっていません。






まとめ:未来の地図を、自分の手で読み解くために
さいごに、この記事のポイントを、もう一度まとめておきましょう。
- サウジアラビアは強い危機感から、「サウジ・ビジョン2030」という国家規模の体質改善プログラムを進めている。
- 有り余る若者のエネルギーを向ける新しい舞台として、「メタバース」に国家の未来を賭けている。
- メタバースとは、ゲームの延長ではなく、新しい経済や社会が生まれる「もう一つの現実」である。
- 未来都市「NEOM」は、現実とデジタルが融合したメタバース都市であり、人類の未来を実験する巨大な研究室でもある。
- 政府系ファンド「PIF」を使い、オイルマネーで世界の技術とコンテンツを買い集め、未来の産業の覇権を握ろうとしている。
- この壮大な実験は、大きな可能性(光)と共に、プライバシーや監視社会といった課題(影)も投げかけている。
この記事を読んで、もしかしたらあなたの頭の中は、興奮と、少しの戸惑いで、いっぱいになっているかもしれません。
それでいいんです。
大切なのは、今日あなたが知った、この巨大な変化の兆しに対して、あなた自身のアンテナを立てておくことです。
「サウジアラビア」、「メタバース」、「NEOM」。
などの言葉を見聞きした時、きっとあなたは、以前とはまったく違う視点で、そのニュースの裏側にある大きな物語を読み解くことができるようになっているはずです。
ぜひ、あなたの生活の片隅で、この砂漠の国が描く壮大な物語の続きを、見守ってみてくださいね。
さいごまでお読みいただき、本当にありがとうございました。