サウジアラビアが遂行している国家戦略「サウジビジョン2030」。
中核となる未来都市「NEOM」の開発は、とてつもなく壮大なものです。
なので、なかなか計画通りにはいかない、というのが現状。
先日も、NEOMの中心都市である「The Line」の開発計画を見直すと報じられました。
サウジアラビア政府は近未来都市「ザ・ライン」の建設計画について、優先事項を見直す一環として複数のコンサルティング会社に戦略的な再評価を依頼した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 https://t.co/XYBMp62rF3
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) July 16, 2025
こんな未来都市、本当にできるのかな???
なんて思われる方も多いはず。
計画縮小や見直しはありますが、NEOMの開発は着実に進んでいますよ。
本記事では、壮大な計画の全体像から、注目の各プロジェクトが「今、どうなっているのか」、2025年最新の現実的なロードマップをお伝えします。
この記事を読み終えるころには、未来都市NEOMが目指す壮大なビジョンと、今直面しているリアルな現在地、その両方を深く理解できるはず!
それでは、はじめていきましょう。

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そもそも未来都市NEOM(ネオム)とは? 基本をおさらい
まず、NEOMが一体どのようなプロジェクトなのか、その基本からおさらいしておきましょう。
サウジアラビアの北西部に、日本の四国地方がすっぽり入ってしまうほどの広大な土地(約26,500平方キロメートル)に、ゼロから未来の都市を建設するという、まさに空前絶後の国家プロジェクト
プロジェクト名 | NEOM(ネオム) |
場所 | サウジアラビア北西部(紅海沿岸) |
総面積 | 約26,500km²(日本の四国とほぼ同じ) |
ビジョン | 石油に依存しない、持続可能な新しい経済モデルと、人類の新しい暮らし方を創造する |
動力源 | 100%再生可能エネルギー |
単に新しい都市をつくる、という話ではありません。
石油に依存してきた国のあり方を根本から変え、テクノロジーと自然が完全に調和した、まったく新しい世界のモデルを創り出すことを目指しているのです。




「スマートシティ」を超える「コグニティブ・シティ」という考え方
NEOMを理解する上で欠かせないのが、「コグニティブ・シティ(認知都市)」ということばです。
これまでの「スマートシティ」は、センサーなどを使って情報を集め、交通渋滞の緩和といった問題が「起きてから」対応する、いわば事後対応型でした。
しかし、NEOMが目指す「コグニティブ・シティ」は、その先を行きます。
いわば、「自分で考えて、先回りしてくれる都市」のような存在です。
都市に張り巡らされたセンサーやAIが、住民の行動パターンやニーズを学習し、問題が起こる前に予測して、先回りして解決策を提案してくれるのです。
そんな「摩擦のない生活(frictionless living)」を実現するというビジョンは、今も変わっていません。
【本題】NEOM主要プロジェクトとそれぞれの完成予定(2025年最新版)
さて、ここからが本題です。
壮大なNEOMプロジェクトは、それぞれが驚異的なコンセプトを持つ、複数のプロジェクトの集合体です。
しかし、その実現に向けた道のりは、当初の想定からいくつかの変更が加えられています。
2025年7月現在の、より現実的な状況を見ていきましょう。
プロジェクト | 当初の主張(完成予定) | 最新の状況(2025年7月時点) |
---|---|---|
THE LINE | 2030年に第1フェーズ完成(人口150万人)、全長170km | 計画を大幅に下方修正。2030年目標は全長2.4km、人口30万人未満に。 |
SINDALAH | 2024年中に最初のゲストを迎える | 2024年中の開業には至らず。現在も建設中で、明確な開業時期は未定。 |
TROJENA | 2026年完成目標 | 2029年アジア冬季競技大会の開催は変わらず。2026年完成を目指し建設は進行中。 |
OXAGON | 2024年に居住開始 | 産業ハブとしての機能が先行。居住開始に関する具体的な発表は限定的。 |
1. THE LINE(ザ・ライン):大幅な計画見直し
NEOMの象徴である直線未来都市「THE LINE」は、最も大きな計画変更がありました。
当初は、全長170kmの都市に2030年までに150万人が住むという、まさに度肝を抜く計画でした。
しかし、ブルームバーグなどの報道によると、財政的な制約などから、サウジアラビア政府はこの計画を大幅に見直しました。
2030年までの短期目標は、全長2.4km、居住人口30万人未満へと、大幅に下方修正されています。






全長170kmという最終的なビジョン自体がなくなったわけではありません。
しかし、当面の目標は大きく縮小された形です。
これは「後退」というよりも、前例のない挑戦を実現可能なものにするための「現実的な判断」と捉えることができるかもしれません。
2. SINDALAH(シンダーラ):開業は目前か、しかし遅延
NEOMの「最初の顔」として、最も早く完成すると期待されていた高級リゾート島「SINDALAH」。
当初の計画では、2024年中に最初のゲストを迎える、とされていました。
しかし、その目標は達成されず、2025年7月現在も建設が続けられています。
公式サイトでは開業に向けた準備が進められていることが示されていますが、具体的な新しい開業日はまだ公にされていません。
NEOMプロジェクト全体の実現性を示す試金石として注目されていただけに、この遅れは、壮大な計画の難しさを物語っています。
3. TROJENA(トロジェナ):大会に向け建設は進行中
砂漠の山中にスキーリゾートを建設するという「TROJENA」。
こちらのプロジェクトは、比較的明確な目標に向かって進んでいます。
2029年に開催されるアジア冬季競技大会の開催地であることに変更はありません。
この国際的なイベントが明確な期限となっているため、湖の掘削やインフラ建設などが着実に進められています。
2026年の完成という目標は非常に野心的ですが、プロジェクトを推進する強力な動機付けになっていることは間違いないでしょう。
4. OXAGON(オクサゴン):産業ハブとして先行
海に浮かぶ次世代の工業都市「OXAGON」はどうでしょうか。
こちらも、世界最大の浮体式構造物というコンセプトに変わりはありません。
現在は、港湾施設など、産業とイノベーションのハブとしての機能が先行して開発されています。
しかし、「2024年中に最初の居住者が生活を始める」という点については、具体的な進捗はあまり公開されていません。
まずはNEOM全体の経済を支える産業インフラの整備が優先されている、と理解するのがよさそうです。
【結論の修正】NEOM全体の完成はいつか?
さて、最新の状況を踏まえて、さいしょの疑問に戻りましょう。
- 「NEOM全体としては、いったいいつ完成するの?」
- 「NEOMには明確な完成日は存在せず、常に進化し続ける都市である」
このプロジェクトの理念は、今も変わっていません。
しかし、そのプロセスは当初の想定よりも、はるかに現実的で、長期的なものへと姿を変えつつあります。






サウジアラビアの国家計画「サウジ・ビジョン2030」は、今も重要な節目です。
しかし、THE LINEの計画縮小に見られるように、すべてのプロジェクトがこの年までに壮大な形で完成するわけではありません。
より現実的な目標に再設定し、段階的に開発を進める方針へとシフトしているのです。
【現実的な視点】NEOMが直面する課題
元の記事でも触れた課題に加え、最新の状況では、特にコストの問題がより深刻な課題として浮かび上がっています。
顕在化するNEOMの課題
- 天文学的なコスト:
プロジェクトの総工費は当初の想定を上回ると見られ、サウジアラビアの国家財政への負担が、THE LINEの計画見直しの直接的な原因になったと報じられています。 - 資金調達の必要性:
政府系ファンドからの投資に加え、海外からの直接投資が不可欠ですが、その資金計画の実現が大きな課題となっています。 - 技術的・倫理的リスク:
前例のない技術の統合や、コグニティブ・シティがもたらすプライバシーの問題など、乗り越えるべきハードルは依然として山積みです。
「コグニティブ・シティ」として成長し続けるという壮大なビジョンの前に、まずはこれらの現実的なハードルを一つひとつ乗り越えていく必要があるのです。
まとめ:NEOMの終わりなき挑戦は続いている!
さいごに、2025年最新版のポイントをまとめておきましょう。
プロジェクト名 | 当初の計画/目標 | 現在の状況・変更点 |
THE LINE | 全長170kmの未来都市を建設する。 | 2030年までの目標を2.4kmに大幅縮小。 |
SINDALAH | NEOM初の観光地として開業する。 | 開業が遅延しており、新たな時期は未定。 |
TROJENA | 2029年アジア冬季競技大会の会場となる。 | 計画通り建設が進行中。 |
OXAGON | 未来の産業ハブとなる。 | 計画通り建設が進行中。 |
NEOM全体 | 壮大なビジョンを早期に実現する。 | 莫大なコスト等の課題に直面し、長期的・段階的なアプローチに移行。「終わりなき挑戦」となっている。 |
その実現への道のりは、当初描かれた一直線の高速道路ではなく、現実の地形に合わせて進む、より慎重で長期的な旅へと姿を変えつつあります。
人類史上最大ともいわれるこの挑戦が、今後どのように現実の形になっていくのか。
その壮大なビジョンと、直面する厳しい現実の両方を見つめながら、わたしたちも引き続き注目していく必要がありそうですね。
さいごまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
参照元
- Cognitive technology and smart thinking: redefining city living
- How Neom will allow people to manage and trade their personal data – Cities Today
- NEOM Tech & Digital Co. unveils XVRS – a first-of-a-kind, cognitive digital twin metaverse platform – PR Newswire
- Neom unit launches 3D digital twin metaverse platform – Gulf Construction
- Neom launches digital twin metaverse platform – Middle East Construction News
- NEOM Invests $1 Billion in Metaverse – Saudi Projects
- Tonomus: Pioneering NEOM’s Cognitive Evolution and the Path to the Metaverse
- NEOM’s tech firm TONOMUS launches first digital communications facility at Oxagon
- NEOM Tech & Digital Co. announces M3LD – a groundbreaking platform enabling users to control and earn from personal data – PR Newswire
- M3LD — a groundbreaking platform enabling users to control and earn from personal data